トシリズマブの次世代製品の日本P1開始

医薬メモ: トシリズマブ(tocilizumab、アクテムラ、ヒト化抗IL-6受容体抗体、関節リウマチ薬)の次世代製品「SA237」の国内Phase1が始まった(中外製薬、2010.12)。SA237はトシリズマブと同様の薬効と安全性を持ちながら、トシリズマブと比較して「血漿中滞留性」が改善されている。

♪ IL-6について: サイトカインに分類される蛋白質。T細胞やB細胞、線維芽細胞、単球、内皮細胞、メサンギウム細胞などの様々な細胞により産生される。
♪ IL-6受容体について: 膜結合型と可溶性の2種類が存在する。IL-6受容体とIL-6が結合すると、IL-6受容体はgp130と会合し、細胞内にシグナルが伝わる。
♪ トシリズマブについて: IL-6受容体と結合しシグナル伝達を阻害する。膜結合型IL-6受容体と可溶性IL-6受容体のいずれとも結合できる。CDRはマウス型でその他はヒトIgG1
♪ SA237について: トシリズマブのアミノ酸配列改変型抗体。トシリズマブ等の通常の抗体は1回しか抗原と結合できないが、SA237はpH依存的にIL-6受容体から解離した後、再度別のIL-6受容体と結合することができることに特徴がある。SA237に用いた改変技術は他の抗体にも応用できるらしい。
♪ SA237のpH依存性について: SA237とIL-6受容体は、血漿中の中性条件下(pH 7.4)では、SA237内の中性のHis残基を介して強く結合する。一方で、エンドソーム内の酸性条件下(pH 6.0)では、上記His残基がプロトン化することにより結合力が低下し、SA237がIL-6受容体から解離する。
♪ SA237のリサイクルについて: ①血漿中(pH7.4)でSA237と可溶性IL-6受容体が結合する、②結合状態でエンドソーム(pH 6.0)に取り込まれる、③エンドソーム内でSA237と可溶性IL-6受容体が解離する、④可溶性IL-6受容体はリソソームにより分解される、⑤SA237はFcRnによって血漿中にリサイクルされる、というメカニズム。Nat Biotechnol. 2010 Nov;28(11):1203-7. Epub 2010 Oct 17.
♪ 関連特許出願: 再表2009/041643、再表2009/041621等いくつかヒット。

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