皮下組織増加促進用組成物特許の第三者意見募集の件(東海医科対Y)

・知的財産高等裁判所第1部
・令和5年3月24日判決言渡
・令和5年(ネ)第10040号 損害賠償請求控訴事件
(原審:東京地方裁判所令和4年(ワ)第5905号)
・控訴人:株式会社東海医科
・被控訴人:Y(個人)
・特許5186050
・発明の名称:皮下組織および皮下脂肪組織増加促進用組成物
・募集要項:https://www.ip.courts.go.jp/vc-files/ip/2024/boshuuyoukou.pdf

2024年6月24日、上記の事件に関して、知的財産高等裁判所は第三者からの意見募集をしました。
2024年9月6日に募集は締め切られていますが、ざっと読んでみました。
本件特許の請求項1、4は以下の通りです。
【請求項1】
自己由来の血漿、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)及び脂肪乳剤を含有してなることを特徴とする皮下組織増加促進用組成物。
【請求項4】
豊胸のために使用する請求項1~3のいずれかに記載の皮下組織増加促進用組成物からなることを特徴とする豊胸用組成物。
被控訴人の行為は以下の通りです。
(3)被控訴人の行為等
被控訴人は、形成外科医院(以下「本件医院」という。)を営む医師であり、本件医院において、①被施術者から採取した血液の細胞成分を取り除いた血漿、②トラフェルミン(遺伝子組換え)製剤「フィブラスト®スプレー」、③脂肪乳剤「イントラリポス®」、及び他の薬品を混合して薬剤(①~③が全て混合された一つの薬剤を用いていたか、これらが別々に混合された二つの薬剤を順次用いていたかにつき、当事者間に争いがある。)を製造し、これを被施術者の胸部に注射して投与する方法による血液豊胸手術(以下「本件手術」という。)を提供していた。
意見募集事項は以下の通りです。
3 意見募集事項
(1)本件特許は、「産業上利用することができない発明」(特許法29条1項柱書)についてされたものとして、特許無効審判により無効とされるべきものか。
(2)本件発明は、「二以上の医薬(人の病気の診断、治療、処置又は予防のため使用する物をいう。以下この項において同じ。)を混合することにより製造されるべき医薬の発明」(特許法69条3項)に当たるか。
(3)上記2(3)の①~③が、それぞれ本件発明の「自己由来の血漿」、「塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)」及び「脂肪乳剤」に当たると仮定した場合において、
ア 医師である被控訴人が、本件医院において、本件手術に用いるために、上記①~③を全て混ぜ合わせた薬剤(以下「本件混合薬剤」という。)を、処方せんを発行することなく看護師又は准看護師に指示して製造する行為は、「医師又は歯科医師の処方せんにより調剤する行為」(特許法69条3項)に当たるか。
イ 医師である被控訴人が本件混合薬剤を製造する行為は、医療行為に密接に関連する行為であるところ、何らかの理由により、本件特許権の効力が及ばないといえるか。
ウ 医師である被控訴人が、本件医院において、上記①及び②を含む薬剤と、上記③を含む薬剤とを別々に本件手術に用い、被施術者の体内において①~③が混ざり合うとき、被控訴人による本件手術は、本件発明に係る「組成物」の「生産」に当たるか。
上記①~③を別々に投与しているとすれば、上記の請求項での権利行使はなかなか難しそうな印象です。
ウに関しては、仮にあたるとするなら組成物にはどこまで含まれるか(ヒトは、地球は)という疑問が出てきそうな気もします。効果の観点から、「本願の効果を奏する範囲で対象成分同士が接触した場合は、組成物が生産されたと解釈する」というのは一応考えられるかもしれませんが、ちょっと苦しいでしょうか。

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