STAP細胞の特許出願(特表2015-516812)に拒絶理由通知書がでて、その後補正がされたそうです。
・日本の「STAP特許出願」拒絶理由にハーバード大が想定外の応答
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20170914-00075755/というわけで、審査書類を見てみました。
まず、補正前の請求項1は下記のとおりです。(請求項74まであります。)「【請求項1】
細胞をストレスに供する工程を含む、多能性細胞を生成する方法。」
補正後の独立請求項は下記のとおりです。(下線は補正箇所です。)「【請求項1】
細胞を、低pHストレスに供する工程を含む、Oct4を発現する細胞を含有する細胞塊を生成する方法であって、該低pHが、5.4~5.8のpHであり、且つ、pHの調整がATPを用いて行われることを特徴とする、方法。
【請求項20】
細胞を、pH5.4~5.8の低pHストレスに供する工程を含む、該細胞においてOct4遺伝子の発現を誘導する方法であって、ここで、pHの調整が、ATPを用いて行われることを特徴とする、方法。
【請求項21】
細胞を、pH5.4~5.8の低pHストレスに供する工程を含む、Oct4遺伝子を発現する細胞の製造方法であって、ここで、pHの調整が、ATPを用いて行われることを特徴とする、方法。」
拒絶理由通知書では、新規性、進歩性、実施可能要件、サポート要件、明確性、産業上の利用可能性に関する拒絶理由が通知されました。
実施可能要件に関しては、審査官は以下のコメントをしています。「・・・これを本願の発明の詳細な説明についてみると、その実施例において示された内容は上記両Nature論文と同内容のものと認められるところ、上述の論文取り下げ及び再現実験の結果という事情に鑑みれば、現時点においては、当該論文において確認された現象は、その信憑性については疑義があり、また、再現不可能なものというほかない。」
「仮に、発明の詳細な説明の記述に包含される条件のうち限られた特定の条件において、細胞をストレスに供することによって細胞を脱分化させて多能性細胞を生成することが可能であったとしても、本願発明の属する技術分野において通常の知識を有する研究者、すなわち当業者でさえ、その再現のためには試行錯誤、複雑高度な実験等を要し、細胞を脱分化させて多能性細胞を生成するに至っていないのであるから・・・」つまり、再現できないし、仮にできたとしても、過度な試行錯誤を要するからNGっていっています。
まぁこれまでの経緯を考えるとそうなりますよね。
これに対して、出願人は上述の補正をしました。即ち、「STAP細胞」は「Oct4を発現する細胞」に補正され、「低pH」、「5.4~5.8のpH」、「調整がATPを用いて行われること」の限定が加わりました。
ざっと読んだ感じでは、拒絶理由通知書ではOct4発現細胞についてまでは否定されていないようです。
たしか、小保方さんもOct4を発現する細胞を作ったと『あの日』の中で述べていたと思います。
明細書内にATPでpHを調整したっていう直接的な記載がないのは気になりますが、ぐぐった感じではSTAP細胞の実験においてATPをpH調整のために使っていたのは事実のようです。
・・・とはいいつつも、これで特許になりそうかというとそうもいかないだろうなという印象です。
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