最近、特許業界でAI(人工知能)がよく話題になっています。先日の特許情報フェアでもAI関連のセミナーやブースがかなり増えていたように思います。
一昨日はこんなニュースも報道されていました。・「AIで弁理士が失業」に異議 「そんなに単純な仕事じゃない」 日本弁理士会の梶副会長
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171116-00000074-zdn_n-sci
特許業界で「失業」は増えるのでしょうか。
普通に考えるとAIで特許実務が効率化して、1人が裁ける仕事量が増えて、その分人はいらなくなるかと。そうすると程度問題はありますがAIの影響で失業や業界人口減ってことはあり得るんだと思います。
記事中の92.1%っていう数字は何年後の話をしているかによるのかなと思います。
現時点ではAIができることは限られているので、特許調査への利用を足がかりにちょっとずつって感じなんだろうと思います。
AIを特許調査に利用したシステムとしてはこういうものがあります。■FRONTEOのKIBIT Patent Explorer
特許情報フェアのブースでプレゼンを聞きました。
http://www.fronteo.com/corporate/news/uploadfile/docs/20171020.pdf
> KIBIT Patent Explorerは見つけたい文書(発明提案書、無効化したい特許資料等)の内容を“教師データ”として人工知能KIBITに学ばせ、少量の教師データをもとに膨大なデータを解析し、短時間でスコアリング(点数付け)による文書の抽出ができます。
概念検索みたいな感じで、検索式を作らなくてもAIが関連特許をピックアップしてくれて、さらに段落ごとの関連性評価も表示してくれるようです。
検索式を自分で作りなれている人には参考程度の利用に限られるかもしれませんが、そうじゃない人には結構役に立つかもしれません。とはいっても、普通の検索システムに比べて費用がかなり高いのでなかなか導入できるものではないのと、おそらく精度もこれからって感じなんだと思います。
ブースのプレゼンでは、結局のところ、KIBITがした関連性の評価がどの程度の精度なのかがわかりませんでした。
KIBITがピックアップした特許文献の中に拒絶理由通知書で引用されなかったが弁理士が引例になってもおかしくないと判断したものが含まれていました、と言っていましたが、そんなことは概念検索でも普通にありえそうなので、なんとも判断できないなと思いました。
拒絶理由通知書の引例よりも強い引例が見つかりましたって言われたら、ぜひ詳細を聞いてみたいと思いますが。
もしくは、調査担当者が検索式を作って調べた結果と、KIBITで一般の人が調べた結果を比べて、同じような結果がでた(検索時間はKIBITの方が短い)、みたいな事例をいくつかだしていくとよいのかもしれません。さらに、AIを使わない概念検索を比較例にしてもいいかもしれません。(そこまでの精度があればですが。)■アイピーファインのDeskbee
こちらも特許情報フェアでプレゼンを聞きました。
http://www.ipfine.com/deskbee/
こちらは事前に準備した多数の特許文献データをシステムに読ませると、AIが関連性評価をしてくれるというもののようです。
このときに、ユーザーが評価した結果(特許Aは関連、特許Bはノイズみたいな)を教師データとしてAIに学習させることがきるそうです。この点はDeskbeeの強みのようです。KIBITのプレゼンではありませんでした。
Deskbeeは、侵害予防調査でSDIで上がってきた特許を評価するのに使えるそうです。確かに、事前に評価結果を準備することを考えると、この特定用途が向いているように思います。ちなみに、KIBITのプレゼンは先行技術調査・無効資料調査を対象としていました。
人工知能はGoogle社が提供するTensorFlowを使っているとのこと。
AI調査システムは今導入するにはハードルが高すぎますが、将来、費用が下がって、精度がよいことがわかれば使ってみたいですね。
特許業界でAIができることはもっとあると思いますので、どんどん開発してもらいたいと思います。
失業問題の方はベーシックインカムで。
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