<知財高裁/エリブリン特許の確認訴訟> 訴えの利益を欠くとして控訴が棄却された事例(ニプロ対エーザイ)

 判決紹介 

・令和4年(ネ)第10093号 特許権侵害差止請求権及び損害賠償請求権不存在確認請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所令和3年(ワ)第13905号)
・令和5年5月10日判決言渡
・知的財産高等裁判所第1部 大鷹一郎 遠山敦士 大鷹一郎
・控訴人:ニプロ株式会社
・被控訴人:エーザイ株式会社、エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
・特許6466339、特許6678783
・発明の名称:乳がんの処置におけるエリブリンの使用
 コメント 
今回も少し前の判決の紹介です。
ニプロ(控訴人)は、後発医薬品である「エリブリンメシル酸塩静注1mg「ニプロ」」について製造販売承認を受け販売するために、東京地裁に確認訴訟を提起しましたが、下記ブログの通り、訴えの利益を欠くとして却下されていました。
<東京地裁/エリブリン特許の確認訴訟> 訴えの利益を欠くとして却下された事例(ニプロ対エーザイ)
判決紹介 ・令和3年(ワ)第13905号 特許権侵害差止請求権及び損害賠償請求権不存在確認請求事件 ・令和4年8月30日判決言渡 ・東京地方裁判所民事第46部 柴田義明 佐伯良子 仲田憲史 ・原告:ニプロ株式会社 ・被告:エー...

本件は、その控訴審判決です。
知財高裁は、本件各訴えを却下した原判決は相当であると判断し、本件控訴を棄却しました。
判決抜粋を以下に記載します。
判決
第3 当裁判所の判断
1 争点①(被控訴人エーザイRDに対する現在の差止請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか。)及び②(被控訴人らに対する現在の損害賠償請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか。)について
以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の1記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決22頁16行目の「確認の利益は」を「確認の訴えは」と、同頁21行目の「最判昭和47年11月9日」を「最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・」と改める。
⑵ 原判決23頁8行目から9行目にかけての「2⑷ウ」を「1⑷エ」と、同頁12行目の「エ」を「オ」と改め、同頁13行目から14行目にかけての「本件各特許権を有する。」を削り、同頁16行目の「これらの状況と」を「しかるところ、」と改める。
⑶ 原判決24頁14行目の「同⑶」を「同⑵」と、同頁18行目の「ア」を「イ」と改める。
⑷ 原判決25頁17行目の「なお」から20行目末尾までを次のとおり改める。
「なお、仮に二課長通知等に基づく運用によれば、本件各特許が存在するために原告医薬品の製造販売についての厚生労働大臣の承認がされないことが控訴人にとって問題であるとしても、そのことは、厚生労働大臣が医薬品医療機器等法14条3項に基づく原告医薬品の製造販売についての控訴人の承認申請を認めるかどうかという控訴人と厚生労働大臣(国)との間の公法上の紛争であって、そもそも控訴人と被控訴人らとの私人間の法律上の紛争であるということはできないし、かかる公法上の紛争については承認申請に対して不作為の違法確認の訴えの提起や厚生労働大臣等に対する不服申立て等の法的手段によって救済を求めるべきであるから、控訴人の有する権利又は法律的地位の危険又は不安を除去するため控訴人と被控訴人らとの間で本件訴訟において確認判決を得ることが必要かつ適切であると解することもできない。
⑸ 控訴人は、当審において、①パテントリンケージのシステムが発動するということ自体が、控訴人において、特許権の侵害の有無という法律的地位が問題になっている状況にあることを意味し、現に、「医薬品として原告医薬品が厚生労働省から承認されない」という「控訴人の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存在」している状況にあり、このような状況自体が現在の法的紛争であり、また、パテントリンケージは、あくまでも先発医薬品メーカの特許権が有効で、かつ、後発医薬品がその技術的範囲に含まれることを前提とする制度であり、被控訴人らに対し、裁判所による侵害の有無の判断(確認判決)さえ示されたならば、「医薬品として原告医薬品が厚生労働省から承認されない」という、控訴人の法律的地位に対する危険は除去されるのであるから、確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に該当する、②控訴人は承認申請のため原告医薬品を製造しており、承認後に行う製造行為も事実行為としては同じであって、さらに、控訴人は、原告医薬品が承認され薬価収載さえされれば、すぐに原告医薬品の製造販売を行う意思を有しており、他方、被控訴人らは、現状において権利行使をする意思がないとは述べているが、実際に権利行使を行い得る状況にあり、また、確認の利益は客観的な状況によって判断されるべきであって、被控訴人らの主観によって左右されるべきではないから、侵害の有無を判断すべき客観的な状況が存在する以上、本件における確認の利益は認められるべきである、③二課長通知に基づく実務がTPP11協定(第18・53条2項)に根拠を有するものとして許容されるためには、特許抵触の有無に疑義がある本件のような確認訴訟が提起された場合については、確認の利益を認めて裁判所が実体的な判断を示すことが必要であるなどとして、本件においては確認の利益が認められるべきである旨主張する。
しかしながら、①については、前記(4)のとおり、控訴人が主張する「医薬品として原告医薬品が厚生労働省から承認されない」という「控訴人の有する権利又は法律的地位」の「危険又は不安」とは、控訴人と厚生労働大臣との間で問題となる事柄であり、控訴人と被控訴人らとの間の「請求権の存否に係る法律上の紛争」に係るものではないし、また、かかる危険又は不安を除去するため控訴人と被控訴人らとの間で本件訴訟において確認判決を得ることが必要かつ適切であると解することもできない。
②については、前記⑷で述べた事情を考慮すると、控訴人と被控訴人らとの間の本件差止請求権及び本件損害賠償請求権の存否について、現に当事者間に紛争が存在し、控訴人の有する権利又は法律的地位に危険又は不安が存しているとは認められないから、本件差止請求権及び本件損害賠償請求権の不存在確認請求に係る本件各訴えについて確認の利益があると認められないと判断したものであって、被控訴人らの主観のみによってこのような結論を導いているわけではない。
③については、TPP11協定の第18・53条2項は、医薬品の販売承認に当たって、特許抵触の有無に疑義があるとして本件のような特許権侵害に係る確認訴訟が提起された場合に、裁判所が確認の利益を認めて実体的な判断を示さなければならない旨を規定するものではない。
したがって、控訴人の上記主張は理由がない。」
⑸ 原判決25頁21行目の「⑸」を「⑹」と改める。
2 争点③(被控訴人エーザイRDに対する将来の差止請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか。)及び争点④(被控訴人らに対する将来の損害賠償請求権の不存在確認請求に訴えの利益があるか。)について
以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の3記載のとおりであるから、これを引用する。
⑴ 原判決26頁16行目の「本件において」を「本件証拠上」と、同頁19行目の「2」を「1」と改める。
⑵ 原判決26頁24行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
「 なお、控訴人は、現在の二課長通知に基づく承認審査の実務において、裁判所が判断すべき技術的範囲の属否について、厚生労働省が機械的な処理を行っているという状況は、法治主義に反する状況というべきであって、後発医薬品メーカの裁判を受ける権利や営業の自由といった憲法上の権利をも侵害するものである旨主張する。
しかし、本件で控訴人が確認を求めている対象は、控訴人と被控訴人らとの間の法律関係であって、仮に上記承認審査の実務に控訴人が指摘するような問題があるとしても、そのことによって、上記法律関係について確認の利益が認められることにはならないというべきである。」
(3) 原判決26頁25行目の「将来において」を削る。
3 争点⑤(被控訴人らに対する原告医薬品が本件各発明の技術的範囲に属しないことの確認請求に訴えの利益があるか。)について
以下のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の4記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決27頁13行目の「適切有効」を「必要かつ適切」と改める。
(2) 原判決27頁15行目の「二課長通知等」の次に「に基づく運用」を加え、同頁17行目の「そのことによって」から19行目の「解されない。」までを「そのことは、前述のとおり、控訴人と厚生労働大臣(国)との間の公法上の紛争であって、そもそも控訴人と被控訴人らとの私人間の法律上の紛争であるということはできないし、かかる公法上の紛争については承認申請に対して不作為の違法確認の訴えの提起や厚生労働大臣等に対する不服申立て等の法的手段によって救済を求めるべきであるから、控訴人の有する権利又は法律的地位の危険又は不安を除去するため控訴人と被控訴人らとの間で本件訴訟において確認判決を得ることが必要かつ適切であると解することもできない。」と改める。
第4 結論
以上によれば、本件各訴えは、いずれも訴えの利益を欠くものであるから、これらを却下すべきである。
したがって、本件各訴えを却下した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
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