<判決紹介>
■コメント:
課題が新規であるとして進歩性を主張すると、自明の課題であると言われてしまうことがある。 拒絶審決維持。 ☆
■判決抜粋:
平成26年(行ケ)第10059号 審決取消請求事件
平成26年12月18日判決言渡、知的財産高等裁判所第3部
原告: ユーロ–セルティック エス.ア.
被告: 特許庁長官
出願: 特願2004-129590
請求項1:
プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ中に,ヨードホールを含有する乾燥リポソーム製薬組成物を含む,保存安定性を備えたパッケージ。
第3 原告の主張
・・・。
2 取消事由2(相違点(A)に係る容易想到性の判断の誤り)
審決は,引用例1発明に引用例2の知見を勘案して,相違点(A)に係る本願発明の構成とすることは,当業者にとって容易想到である旨判断したが,この審決の判断は,事後的な分析によるものであり,誤りである。
以下の点によれば,本願発明に係るヨードホール含有乾燥リポソーム製薬組成物を「プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ中に」保存するものとすることに想到することは,当業者であっても困難である。
(1)引用例1には,ヨードホール含有乾燥リポソーム製薬組成物を長期間にわたり保存することに関しては示唆すらされておらず,ましてや,「プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ」に入れて保存することに関する示唆もない。すなわち,引用例1には,本願発明の解決課題及び解決手段について,開示も示唆もされていない。
(2)引用例2によれば,ポビドンヨード粉末を,例えば遮光・色付きではない合成樹脂容器に保存し得るといった技術事項については把握し得たとしても,本願発明の「プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ」に対する反応性については開示も示唆もされていないし,特に,「紙又は厚紙製のパッケージ」は,引用例2に記載された合成樹脂に含まれず,引用例2において開示も示唆も全くされていないから,引用例2に基づいて,ガラス製ではない「プラスチック材料,紙又は厚紙製のパッケージ」に想到するように動機付けられることはない。
・・・。
第5 当裁判所の判断
当裁判所は,原告の主張は理由がないと判断する。その理由は次のとおりである。
・・・。
(4)相違点(A)に係る構成の容易想到性について
ア 前記(2)の技術常識を考慮すれば,引用例1発明のポビドンヨードを含有する凍結乾燥させたリポソーム固体は,医薬製剤として(使用時に再構築して)使用されるものである(【0024】)以上,長期間安定に保存できる容器に入れることは自明の課題であり,その容器の材質として,医薬品の容器として通常用いられているガラス又はプラスチック等の材質の中から長期間安定に保存できるものを当業者が選択するものということができる。
・・・。
(5)原告の主張について
ア 原告は,引用例1には,本願発明の解決課題及び解決手段について開示も示唆もなく,引用例2には「紙又は厚紙製のパッケージ」の開示も示唆もないと主張する(前記第3の2(1)及び(2))。
しかるに,引用例1発明のリポソーム固体を長期保存の可能な容器に保存することが当業者にとって自明の課題であること,その解決手段として引用例2の記載を踏まえて相違点(A)の構成に至ることに当業者が容易に想到し得たことは,いずれも前記(4)のとおりである。また,「紙又は厚紙製のパッケージ」に関する本願発明の構成を引用例1発明との相違点として認定しないことが誤りではない以上,引用例2にこの点に関する開示や示唆が存在しない旨の原告の主張は失当である。
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