「知財管理」6月号にiPS細胞の製法特許の論文が掲載されました。

「知財管理」2016年6月号に、iPS細胞の製法特許の論文が掲載されました!
昨年の抗体特許の論文に続き2本目です。
6月号の目次はこちらです↓。650~658頁に載りました。

!http://www.jipa.or.jp/kikansi/chizaikanri/mokuji/mokuji1606.html
論文タイトルと抄録は下記の通りです。
タイトル・抄録
iPS細胞の製法特許の記載要件に関する審査傾向、拒絶対応の分析・考察

再生医療などに応用される新しいバイオ医療技術として、人工多能性幹細胞(以下「iPS細胞」と略す)に関する技術が注目されている。この分野の最も基本的な発明としては、Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子の導入で体細胞をリプログラミングすることに基づく製法発明があり、製法特許が取得されている。この製法が報告されてから10年程が経ち、現在では、上記4因子の一部のみを使用する製法や、いずれも使用しない製法が種々発明、出願されている。一方で、新しい分野であるため審査・拒絶対応の蓄積が少なく、明細書作成や拒絶応答の効果的な進め方について不確かな点が多い。そこで、本稿では、iPS細胞の製法特許の記載要件について、審査傾向、拒絶対応の分析・考察を行った。その結果、初期化因子や出発細胞などに関して特徴的な拒絶理由や拒絶応答が見られ、より良い明細書作成や拒絶応答のためのいくつかの指針が得られた。

山中教授のグループによりiPS細胞(人工多能性幹細胞)の開発が発表されてから10年が経ちます。10年前に発表されたiPS細胞の製法は、体細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycの4因子を導入するとリプログラミング(初期化)が起こるという現象に基づくものでした。
現在では、種々の企業・大学から上記4因子の一部のみを使用する製法や、いずれも使用しない製法が報告されています。但し、その数は少なく、まだまだ新しい分野といえます。
そして、新しい分野であるため特許出願の審査・拒絶対応の蓄積が少なく、新規性、進歩性、記載要件を満たす明細書をどう作るべきかについて、実務者は少ない情報から試行錯誤しながら進めているという現状があります。
本論文では、この分野におけるよりよい明細書作成、拒絶対応を行うために気を付けるべき点を探るべく、iPS細胞関連特許を抽出し、審査傾向、拒絶対応について分析・考察しました。
なお、iPS細胞に関連する特許はいくつかのタイプに分類できますが、本論文では、iPS細胞を活用する上で基盤となる「iPS細胞の製法」に関する特許を主な分析対象としました。拒絶理由の種類はより一般化しやすい記載要件を分析対象としました。
山中教授の特許ファミリー(WO2007/069666ファミリー)の状況はすでに他の論文等で解説されていると思いますので、本論文では、その辺りの解説はあまりしないように心がけました。
幅広くiPS細胞関連特許を抽出し、審査傾向、拒絶対応を分析・考察した論文は初なんじゃないかなぁと思います。
詳細についてはぜひ本誌をお読みいただければ幸いです。
(「知財管理」誌は書店に置いていませんので、会員でない方は国会図書館等でご覧ください。)
このような機会を与えてくださった関係者の皆さまありがとうございました。

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