カナダ特許庁費用のクレーム数加算の開始と医薬用途クレーム

カナダではこれまで特許庁費用のクレーム数加算(請求項数加算)がありませんでした。
クレーム数加算とは、特許出願のクレーム数の多さに応じて特許庁へ支払う費用が増える制度のことです。細かい条件は異なりますが、米欧日など多くの国でクレーム数加算の制度があります。
クレーム数加算があることで、特許庁としては、不必要に膨大な数のクレーム数で審査請求がされることを防ぐことができます。一方で、カナダではこれまでクレームをいくつ記載しても特許庁費用が同じでした。
このクレーム数加算が、今回の改正によりカナダでも導入されることになります。概要は以下の通りです。
・審査請求時のクレーム数が20を超える場合、超過クレーム数あたり100カナダドルが発生する。
・支払いは審査請求時。審査請求後にクレーム数が増えた場合は、審査請求後の最大クレーム数に基づいて、許可通知後に料金を支払う。
・改正は2022年10月3日に発効。経過措置により、2022年10月3日より前に審査請求がされ、かつ審査請求手数料が納付された出願については適用されない。
米欧日など、他国の制度に近づくことになります。
実務的には、医薬用途クレームの複数列挙に影響があるなと思いました。
カナダでは、治療方法の特許は許可されませんが、医薬用途クレームは許可されます。これまでは追加費用がかからなかったので、費用を考慮せずに複数の形式のクレームを記載することができました。例えば以下のようなクレームです。
1. X for use in treatment of …
2. A use of X for treatment of …
3. A use of X for preparation of a medicament for …
ここでは例として医薬用途クレームを挙げましたが、他の分野でも同様で、メインクレームと類似の独立クレームを追加で記載することがあります(できるだけ権利範囲を広く解釈できる余地を残すためや、無効審判に耐えやすくするために、クレーム中の用語をちょっと変えたクレームを追加したり、メインクレームとは別の側面から発明を特定したクレームを追加したりします)。そのような場合も、これまでは費用を考慮せずに追加できました。
また、カナダでは米国のように同一発明型(same invention type)と自明型(obviousness type)のダブルパテントの拒絶理由があります。一方で、この拒絶理由に対して、カナダでは米国のようにターミナルディスクレーマーで対応できません。そのため、自発的な分割出願に対して親出願に基づくダブルパテントが通知されたときに困ることが想定されます。これまでは、このリスクを回避するために(費用を気にせずに)親出願内に権利化したいクレームを全て記載しておくという対応ができました。
改正後はクレームが20個を超えるような場合は、追加費用のことも考えつつクレームを検討することになりそうです。
また、自社で管理している案件の中に、2022年10月3日より前に審査請求した方がよい出願がないか、確認しておいた方がよさそうです。バイオや医薬分野だとけっこうあると思います。
なお、今回の改正では、3回目のオフィスアクション後に継続審査請求(RCE)のために816カナダドルが必要になり、さらに、継続審査請求後に2回目のオフィスアクションが発行されたときにもRCEのために同額が必要になるという変更もあるそうです。2019年の改正では審査請求や国内移行の期限が1年短くなりましたし、カナダは大きく変わっていきますね。

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