顕著な効果の主張が認められなかった事例(電磁波遮蔽積層体)


<判決紹介>
顕著な効果の主張が認めらなかった事例。 裁判所は、「発明の効果の程度が厳密に予測できなければ直ちに進歩性を有すると認定されるわけではない。」、「作用の程度を厳密に予測することは困難であるとしても,一定程度の予測性はあるといえる。」と述べている。
また、原告が提出した実験成績証明書に対して、「特定条件における特性の測定結果」であるため、本願補正発明6の技術的範囲全体において奏する顕著な効果であると認めることはできないと判断した。 拒絶審決維持。 ☆☆
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■平成21(行ケ)10362号 審決取消請求事件
■平成221012日、知的財産高等裁判所
■原告: 旭硝子株式会社
■被告: 特許庁長官
■特許出願: 特願2005-513310
■補正後の請求項6: 透明な基材上に電磁波遮蔽膜が36層積層された電磁波遮蔽積層体であって,
前記電磁波遮蔽膜が,前記基材側から順に,屈折率が2.0以上である物質からなる第1の高屈折率層,
酸化亜鉛を主成分とする第1の酸化物層,
銀を主成分とする導電層
および屈折率が2.0以上である物質からなる第2の高屈折率層を有し,
前記導電層は前記第1の酸化物層に直接接し,
前記電磁波遮蔽膜間で直接接する前記第1の高屈折率層と前記第2の高屈折率層が一括して成膜された1つの層からなり,
前記第1および第2の高屈折率層がそれぞれ酸化ニオブを主成分とする幾何学的膜厚が2050nmの層であることを特徴とする電磁波遮蔽積層体
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原告:
「ア 取消事由1(本願補正発明6の技術的意義の看過)
…。 以上説明したように,1つの層を別の層に置換した後の積層体の特性を予測することは困難である。
かかる予測困難性を克服して,本願補正発明6の顕著な効果を予測させる記載は,引用例1ないし3には存在しない。」
裁判所:
「第4 当裁判所の判断
…。 ア 取消事由1(本願補正発明6の技術的意義の看過)について
…。
しかし,本願明細書の実施例及び本件各実験証明書記載の本願補正発明6に対応する各実験例は,本願補正発明6の構成を充足する実験例であるとはいえ,それぞれ製造条件・実験条件により測定結果が異なり,さらには同じ条件で製造した積層体においても,測定結果が異なる場合のあることが認められる(例えば 甲37実験証明書の実験例B① ②)。
したがって,本件各実験証明書記載の各実験例は,選択された特定の条件下での特性を示しているにすぎず,このような特定条件における特性の測定結果の対比をもって,直ちに,引用発明に対する本願補正発明6の技術的範囲全体において奏する顕著な効果であると認めることはできないというべきである。
(
) 次に,原告は,前記第31(4) () のとおり,積層体全体の特性には,積層された複数の層の相互作用が関係するから,1つの層を別の層に置換した場合の,置換後の積層体全体の特性を予測することは困難であると主張する。
しかし,進歩性の判断における効果の参酌は,引用発明と比較した有利な効果が,技術水準から予測される範囲を超えた顕著なものである場合に,進歩性が否定されないこともあるということにとどまり,発明の効果の程度が厳密に予測できなければ直ちに進歩性を有すると認定されるわけではない。したがって,この点に関する原告の主張はその前提において失当である。
また,積層体全体の特性には,積層された複数の層の相互作用が関係するとしても,積層体の特性が,積層体を構成する個別の層の特性に依存することも事実であると認められ,後述するように,層の相互作用についても一定程度の予測性があるといえるから,そのことだけで,本願補正発明6の効果が予測された範囲を超えた顕著なものであるとはいえない。したがって,この点においても,原告の主張は失当である。
(
) そこで,本願補正発明6に技術水準から予測される範囲を超えた顕著な作用効果があるか否かについて,検討する。
…。 したがって 原告の主張する本願補正発明6の相互作用aないしcはその作用の程度を厳密に予測することは困難であるとしても,一定程度の予測性はあるといえるから,本願補正発明6が当時の技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果を奏するとは認められず,この点に関する原告の主張は失当である。
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■判決文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101018105635.pdf

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