<判決紹介>
■コメント:
めずらしい内容の判決がありました。とりあえず原告主張の取消事由をどうぞ。
■判決抜粋:
平成26年(行ケ)第10102号 審決取消請求事件
第3 原告主張の取消事由
審決には,以下のとおり,審決に至るまでの手続に違法な点があるから,取り消されるべきである。
1 取消事由1(拒絶理由通知に不明な用語を用いた手続違背)
(1) 特許庁は,一般の国民が特許等の出願をしたのに対し,拒絶理由通知を出す場合には,手続補正書を提出できるように,拒絶の理由を一般の国民に分かりやすく記載する義務がある。しかし,原告に対する拒絶理由通知には,以下のとおり,内容が不明の用語が記載されており,特許庁は,その意味が分かるように記載しなかった。
ア 拒絶理由通知(2)及び(3)には,「本願請求項1-5に係る発明のカテゴリーが,全て不明瞭である。したがって、本願請求項1-5に係る発明は明確でない。」,「・・本願請求項1-5に係る発明のカテゴリーを「方法」とみなした。」との記載があるが,「カテゴリー」の意味が不明である。
イ 拒絶理由通知(2)及び(3)には,「本願請求項4が,独立請求項なのか請求項1,2又は3の従属項なのか明瞭でない結果,不明確である。・・本願請求項5が,独立請求項なのか請求項1又は2の従属項なのか明瞭でない結果、不明確である。」との記載があるが,「独立請求項」や「従属項」の意味が不明である。
ウ 拒絶理由通知(1)には,「なお,「物」に関する発明とした場合,請求項が,いわゆる「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」にならないように注意されたい。」との記載があるが,「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」の意味が不明である。
(2) 被告は,テキストやインターネットをみれば用語の意味が分かると主張するが,一般国民の中にはテキストを見ておらず,インターネットも使用していない人がいるのであり,特許庁は,出願人が,テキストやインターネットを見なくても,拒絶理由通知書の記載内容だけで理解することができるよう,説明する義務がある。なお,被告は,「独立請求項」の意味について,拒絶理由通知(1)において具体的に指摘しているとも主張するが,同通知書には,「独立請求項」や「従属請求項」との用語が用いられておらず,原告は,同通知書の記載内容がこれらの用語を意味していると理解することはできなかった。
2 取消事由2(補正の仕方の説明義務違反)
特許庁は,原告に対し,抽象的ではなく,具体的に補正の仕方を説明する義務がある。しかし,特許庁は,原告に対し,以下のとおり,手続補正書の提出を指示せず,また,補正の仕方を具体的に説明しなかった。
(1) 原告は,拒絶理由通知(2)を受けた後,審査官に対し,原告が本願で主張している発明の内容は,拒絶理由通知において引用されている刊行物には載っていないとの意見を電話で述べたところ,審査官からは,そのように意見書を書いて提出すればいい,とのみ言われた。そこで,原告が,意見書だけ提出すると,拒絶理由通知(2)に対する手続補正を行っていないとの理由で拒絶査定をされた。審査官は,意見書と一緒に手続補正書も提出しなくてはいけないとの説明をしなければならないのに,そのように述べなかったのであるから,上記義務違反がある。なお,拒絶理由通知(2)と一緒に送られてきた注意書等にも,手続補正書と意見書を一緒に提出することは一切記載されていなかった。
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